くっつくかな?
磁石を使った手作りおもちゃの試作品を作り、実際にいろいろな年齢の子どもたちがそのおもちゃでどのように遊ぶのかを観察していた時のことでした。「磁石のついた小さな魚を、磁石のついた釣竿で釣る」という遊びを、どの年齢の子どもたちもとても楽しんでいました。
その遊び方を一番喜んだのは、私の予想通り満3歳児と年少組の子どもたちでした。彼らは、魚を机の上にランダムに置き、最初は魚を1匹ずつ釣っていましたが、偶然に2匹、3匹、4匹と同時に釣れると、今度はたくさん釣ろうと釣竿をの使い方を工夫するようになりました。
年中組の子どもたちは、最初は同じように1匹ずつ釣っていましたが、そのうちに魚をひとところに集め、一回で4匹釣って遊ぶようになりました。どのような集め方をすると簡単に釣ることができるのか?も考えるようになりました。
さて、年長組の子どもたちは? もちろん最初は、魚を1匹ずつ釣っていましたが、すぐに数匹まとめて釣る遊びに変化しました。その後、釣竿と魚を友だちと数人と分け合い、自分や友だちの体、木製の机や椅子やロッカー、紙製のお道具箱、窓ガラス、タオルかけ、布やプラスチックのおもちゃなどなど、いろいろな物に釣竿の磁石と魚とをくっつけて遊び始めました。いろいろな素材に磁石をくっつけて「あ!ほんとうだ」「これ、してみて」と自分たちで情報交換をしていました。自分で試したことを友だちに報告したり、友だちが出した結果が本当にそうなのかを自分で確かめたり、部屋の中をあちらこちら動き回って、大忙しでした。そのうちに、磁石がくっつきそうな物を予想して、実際にくっつけてみてその当たりはずれの確率を楽しんでいました。そして、友だちといろいろな物を前にして「これは、くっつくでしょうか?くっつかないでしょうか?」と問題を出し合い、その正解率を競い合い、「やっぱりくっつくと思った」「これは、木で作ってあるから、くっつかないよ」など、予想をしたり、すでに知っている結果を伝えあいながら遊んでいました。
年長組の子どもたちの遊びの様子を見て、私はとっても嬉しくなりました。子どもたちは、「ちいさなけんきゅうしゃ」になっていたからです。誰かに教えてもらって知識が増えることも、もちろん大切なことです。しかし私は、子どもたち自身が、知りたい、試したい、どうして?と思い、自ら体験し、その結果を導き出すことがとても大切だと思っています。結果を出すまでには、確かに時間はかかるでしょう。でも、時間がかかった分だけ、子どもたちの体と心の栄養になっているとは思いませんか?
自分で試して、自分で結果を出し、もっともっとと向上していく子どもたちを、すぐ近くでしっかりと見守ることが、身近にいる大人の役目なのではないでしょうか?