ケンケン
満3歳のそら組(誕生日が来て3歳になってから入園する子どもたち)と少つき組(3歳で入園し、誕生日が来て4歳になる子どもたち)は、音楽に合わせて体を動かすことを、今とても楽しんでいます。幼稚園に入園し、自分の体がいろいろな動きをすることを知り、また、自分で「こんなこともできるんだ!」と発見したり、お友だちと一緒に同じ様な動きをして、それを楽しいと感じたり,年上の子どもたちがスキップやケンケンなどをする様子を見て、自分もあのようにしてみたいと憧れを抱いたり・・・
子どもたちに、少し難しい体の動きを経験し、バランスの良い体を作ることを学んでほしいとの思いから、今はみんなで「ケンケン」をしています。5月の終わりには、すでにケンケンをしている子どもはいたのですが、それはほんの少しの人数でした。ほとんどの子どもは、「ケンケン」と言うものがどのようなものなのかさえも、まだ十分にイメージできていない様子でした。「ケンケン」を子どもたちがゼロの状態からどのようにして獲得していくのかを改めて知りたいと思い、観察しているところです。
ある日、まだ「ケンケン」が全くできない年少組の男児2人が私に質問しました。「せんせい、どうしたらケンケンができるようになるの?」 年少組の子どもから、技術についての質問が出たのはビックリでした。「ケンケン」は片足で自分の体重が支えられるだけの筋力が必要で、そして片足でうまくバランスをとることが一番のポイントだと思ったので、私は、自分なりに考えた練習方法を伝えました。「登り棒や鉄棒につかまってケンケンをしてみたらどうかな?」 物につかまり、手で自分の体を支えながら「ケンケン」をすることで、「ケンケン」をしているときに自分の体がどのようになっているのかのイメージが湧き、また、まだ筋力が十分に備わっていない足に負担がかからないこと、そして、「ケンケンができた!!」と言う喜びが味わえること。そのように考えて、練習方法のアドバイスをしました。2人の男児はその後、幼稚園では、外廊下の屋根を支えている柱につかまって自分で練習していました。家庭でも熱心に練習していたそうです。そして、彼らの成果は・・・? 少しずつ「ケンケン」ができるようになってきました。これは、1~2週間での話です。
子どもが自ら、何か目標を持ち、やり遂げたいと思った時、私たち大人は何をすればよいのでしょう?その姿を、いろいろな時に認め、焦らせないで見守ることが一番大切だと思います。同時に、やはり正しい完成形の姿を実際に体験させること(今回の「ケンケン」の場合は、物につかまりながらケンケンすること)で、正しいものをイメージすることができ、少しでもそれに近づこうと子ども自身が自分なりに工夫をすることで、応用力も備わってくるのではないかと思います。
さて、まだ「ケンケン」ができない他の子どもたちはどうしているのでしょうか? 彼らも、「ケンケン」は片足を上げることだけは確実にイメージしているので、今は、とりあえず片足を上げ、前に一歩進もうと頑張っています。しかしあまりに、後ろになる足を高く高く上げているので、バランスを崩して一歩進んでいるといった状態です。それでも彼らは、その状態でも前には体が進むので、「ケンケン」ができたと大喜びしています。私も一緒に「できたね!」と喜んでいます。子どもが「できた!」と言った時は、本当にはできていなくても、周りにいる人たちはやはり一緒に喜ぶことで、子どもは自信を持って次の目標に向かって自分自身で進んで行くのではないかと思います。