カメと遊ぶ
幼稚園には、カメが5匹います。ず~と前からいるので、飼っているというより、住んでいるという感じです。正直に言ってカメは、例えばウサギなどのように、見た目が「かわいい!!」と言う動物ではないような気がします。しかし、しかし・・・なぜか?子どもたちにはとても人気があります。新入園児のある子どもは、かたつむりを見た時に「こわい~」と言って涙目で遠くへ行ったのに、カメは「かわいい」と言って喜んで見ています。
ポカポカと暖かくなった4月のある日、やっと冬眠から目覚めたカメを、運動不足解消!!と、水槽から園庭に放ってみました。子どもたちは大喜びで、触ったり、後を追いかけたり、抱っこしたり・・・一人の子どもが、立ったまま自分の足を広げ、足でトンネルを作りました。するとカメがその足のトンネルをくぐりました。するとそれを見ていた他の子どもが、自分の足を広げ同じように足でトンネルを作りました。しかしカメは、方向を変えて進み、そのトンネルはくぐりませんでした。子どもは、「あれ?」と言う顔をしてカメを見つめていました。その子どもは、カメの前に先回りをして、もう一度トンネルを作りましたが、なぜかカメはまた異なる方向へ行ってしまい、残念ながらトンネルをくぐらなかったのです。カメとの距離や、足の角度などで、カメがその子どもの足を障害物だと認識して避けていったのでしょう。その後も、また何人かの子どもたちがやってきて、ひとりで、また数人でトンネルを作り、遊んでいました。カメは、トンネルをうまく通ったり通らなかったりしていました。カメを抱えて、方向転換をさせ、自分の足のトンネルをくぐらせようとする子どももいましたが、そのうちに、多くの子どもたちがカメの動きに合わせ、足のトンネルの角度を変えたり、自分がカメにゆっくりと近づきカメの正面にトンネルを作って、確実にカメが通るように工夫したりするようになっていきました。
子どもたちは、相手が自分の思い通りにならない時には、自分が相手に合わせようとするよりも、相手をどうにかして自分に合わせさせようとすることがあります。大人からすると「わがまま」と思える時がそのような時ではないでしょうか?しかし、子どもたちは、、自分が相手に合わせることで、相手との楽しい時間を共有できると、カメからもちゃんと実体験として学んでいる様です。よく、『遊びは学び』だと言われますが、それは、このような子どもたちの様子を見ていると、本当ににそうだと、改めて気づかされます。
ちなみに、私はこの幼稚園で働くまで、カメをよく観察したことがなく、よくアニメのシーンにあるように、カメは甲羅を洋服のように着ており、脱ぐことができるのだとずっと思っていました。でも、亀の甲羅は、カメの首や手足、しっぽにくっついていて、決して脱ぐことはできません。そして、動物病院でカメに注射を打ってもらった時、普段は無口なカメも、あまりの痛さに驚いたのか、「キュッ!」と鳴きました。